君は根性を知っているか|NGC1788と茨城遠征

TL; DR

glasnsciです。茨城遠征してきました。動画作りました。1ヶ月ですよ、1ヶ月。8分の動画作るのにイ・チ・カ・ゲ・ツ。どんだけ時間かけてんだって話ですよね。腹を切って死ぬべきです。切腹です。 f:id:fornax:20220209010014j:plain

今回もAramisさんと飛び込みました。Aramisさんは飛べましたが、ぐらすのすちは凍った草で滑ってズデーッってかんじでした。

youtu.be

先日、仕事終わりに布団に突っ伏してウトウトしていたら、ワタクシがまだ幼いときに祖母が若かりし頃の話をしてくれていたのを思い出しました。祖母は東京府の生まれで、当時はまだ練馬区ではなく「村」だったそう。昭和前半の当時、戦中から戦後にかけては、「あの頃は食料が何もなくて食うに困った」と祖母は都市部の常のような話をとうとうと話していたのをよく覚えています。

「8月15日は忘れられないわねぇ」と遠い目をする祖母。 終戦の日恩賜公園にいて、祖母は曾祖母と歩いていたのだそうだった。「お昼にしましょうか」という時間になると、よくわからないが座っていた人もしゃがみこんでいた人も、周囲の人たちはみな直立不動になってラジオを聞いていたそうで、祖母と曾祖母は周りのおじさん方に聞いて我が国が負けたのだということを知ったのでした。

終戦の詔は「朕深く世界の大勢と帝国の現状とに鑑み、非常の措置をもって時局を収拾せんと欲しここに忠良なる爾臣民に吿ぐ」から始まる。終戦の詔はおしなべて言えば「皆さんきちんと投降して無駄な戦闘はしないようにしましょう」「これからも頑張りましょう」ということを言っています。おそらく最も有名な箇所は「耐え難きを耐え、忍びがたきを忍び」の一節。「苦しいことや辛いことも頑張って我慢しましょう」と忍耐を奨励していたのであります。

話は変わりますが、リモート天文台を持つ者と持たざる遠征主体組には、かけられる露光時間には圧倒的かつ絶対的な差があります。「今日晴れているし撮っておくか」を遠征組は実行できず、せいぜい一晩8時間程度露光できれば僥倖。インテグレートした画像を見てノイズを消しつつ善哉善哉と画面の前でほくそ笑む……のが関の山なのです。

と以前までは考えていました。編集長が以下のように先日ツイートしていました。天体活動も、夜間眠気に耐えたり寒さを堪えたりと忍耐が相応に要求される趣味です。持たざるものが持つものに唯一肉薄したり勝ったりすることが可能なのは、忍耐のみなのです。

そういうわけで、不肖ぐらすのすち、誰も行なわないようなことをやろうと考えました。まず、淡い対象に時間をかけてみようということ。そして、それを遠征のみで達成することです。

まず、撮影する対象はなんとなく淡そうなNGC 1788にしました1。今年のお正月前後は、12/31に乙女湖、1/2は富士の山麓、1/4は全国育樹祭記念広場、1/8は茨城県高萩と遠征三昧でして、合計で20.6時間の露光を行ないました。普段の遠征ではせいぜい8時間程度しか撮影したことがなかったので、20時間を超える露光は初めてのことでした。

撮影している最中は「なんでこんな対象撮っているんだろう」と悩み、処理を開始してからも「うまくキマらない」と嘆き、大顧問に泣きつき、Niwaさんに質問し、そーなのかーさんにアドバイスを貰うという手厚い介護を受けてやっと処理を終えました

NGC 1788
NGC 1788
date: 31st Dec. 2021, 2nd, 4th 8th, Jan. 2022
location: Yamanashi-shi & Kawaguchiko-machi, Yamanashi Pref.,/Susuno, Shizuoka Pref.,Takahagi-shi Ibaraki Pref., JPN
optics: Takahshi FC-76 w/ 1.04 Flattener
camera: ZWO ASI 2600MC Pro
mount: iOptron GEM45 w/ QHY5l-II and PHD2
exposure: Gain100, total 20.6 hrs (300sx248frames)

でも、これだけ露光時間をかけて色々やって、やってもらってもなお、先人の結果には及ばないのです。こいつ、相当な難物です。これだけ長い文章を書いているのですから普通はきれいな仕上がりになった結果を載せるものですが、ワタクシは忍耐を知ると同時に諦めを知る男。ここらへんで今日は勘弁してやろう、という捨て台詞とともに釣果を掲載します。

ノイズはなく非常になめらかなのですが、どうにも解像感が足りません。口径の差はでかいってことだなと実感します。

おわりに

もう二度と20時間超え露光なんて遠征でやるもんか!


  1. これは撮影し始めてから知ったのですが、近江商人さんが撮影していて非常に素晴らしいクオリティでした。また雲のジュウザさんも今月の天文ガイドに入選されていて、どちらもわたくしが及ぶべくもないしあがりでした。note.comseikanunkei.net