g線無補正の典型的アクロマートレンズはBXTの夢を見るか?

TL; DR

Probably NOT.

はじめに

BlurX Terminator: BXT は強力な星像回復・収差補正の能力を持ち、今日の天体写真の画像処理には不可欠なツールとなった。機械学習によって様々な収差や大気のゆらぎ、撮像エラーなどを学習したBXTはその多くを補正できるものの、その補正能力には限界がある。しかしながら、熱狂的な天体写真撮影家の多くは、BXTをあくまでツールをとして使用し、補正した例を示すのみである。その補正能力の限界点について言及している例は少なく、またその有効性についての言及例も見かけられない。そのため、本稿ではBXTが補正不可能だった例を挙げるとともに、BXTが補正不可能だった原因、適用が不適切になるであろう例について推察する(しません)。

今回のあらまし

今回、この記事を書いたのはだいこもんのつるの一声があったからです。最近星沼会はTwitterDMでは話題が錯綜しすぎで追っかけるのが大変になったため、今年のはじめからDiscordに移行したのでした。そのDiscordチャンネルででーこもんが

「apoじゃないmamiya-sekorの青ハロ※1にBXTがどれくらい効果あるか試せますか?有効なら旧カミソリマクロ、開放で今度使ってみようかと思ってます」

とおっしゃるじゃありませんか。シショーの頼みとあらばたとえ火の中水の中あの子のスカートの中、わたくしぐらすのすちはどこまでも突っ込んでいきます(あくまで比喩であって本当にそうするという意図はございません)。

要はAI Processの改善が図られたBXTの処理前後でどの程度星像の改善が見られたか確認すれば良いわけです。お茶の子サイサイですわ。

※1 以前APOではないSEKORを購入して試写した結果。惨敗である。 fornax.hateblo.jp

結果

元画像

結果をご覧いただければおわかりの通り、これほどまでに青ハロがはなはだしい場合は、さしものBXTでも適正な処理を施して星像回復をするのは厳しい、と言う結果でした。2024年1月現在の結果なので、今後BXTの処理がよりパワフルになっていくにしたがって、修正できる青ハロなどの諸収差の範囲はより拡大するかもしれません。今後に期待といったところでしょうか。

左:BXTフルフルの処理、右:BXTコレクションオンリーの処理

左:オリジナルイメージ、中:BXTフルフルの処理、右:BXTコレクションオンリーの処理

まとめ

APO銘がつかないMamiya SEKORで撮影した天体写真にBXTを適用したが、青ハロは処理に耐えうるほど低減されず、効果は限定的であった。