ロオズ・ネブラ

TL; DR

本稿の執筆者はglasnsciなむ言ひける。ネタ記事をば早積み果てつ。居室の卓はいと静かにかにて、雲間より覗く晴れの恨みがましきも徒なり。今宵は毎深夜「ついつたあ」に集いたる天文仲間もジユピタアとサタンの大接近を撮影せむとて遠征地に宿りて、アパアトメントに残るは我一人のみなれば。

あらまし

昨晩の半月の夜のことなりしが、平生の望足りて遠征の官命を賜りウラシロダムの湖畔まで来たりて、一つとして古ならぬはなく、筆に任せて書き記しつる「ウエブログ」ごとに幾千言を楽しむ。当時のピツクアツプに載せられて、世の人にもてはやされしかど、今日になりておもへば、穉き思想、身の程知らぬ放言、さらぬも尋常の動植金石、さては風俗などをさへ珍しげに記ししを、心ある人はいかにか見けむ。こたびは南天に正中しせりしとき、撮影対象に迫りくるとて切りしシヤツタアもまだ未現像のまゝなるは、遠征地にて物学びせし間に、一種の「ロオズ・ネブラ」の大宇宙に揺蕩ふ気象現象の如き水素の煌めきをや養ひ得たりむ。

げに東に還る今の我は、西に航せし昔の我ならず、天体撮影にこそ猶心に飽き足らぬところも多かれ、浮世のうきふしをも知りたり、人の心の頼みがたきは言ふも更なり、われとわが心さへ変わり易きをも悟り得たり。きのふのこれはけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写して誰にか見せむ。これや日記の成らぬ縁故なるあらじ。

顛末

此度の遠征地は甲斐国がウラシロダムにて、我に同行せし同志はmejiroなり。同志mejiroは横浜にてかの朋友が一人侍りて遠征地に詣で来むず。亦、Niwa氏がかの同志星屋氏を具して上ウラシロせむ。星屋氏、撮影用写真機を忘れるとて、遺憾の意を表せざるを得ず。氏はKマウントを用ひし為、我が機材EFマウント融通させざるを耐へず。撤収時に気づきし事項なるが、Tosh氏亦ウラシロにて撮影せり。かのアカウントはフオローせしものと勘違いをしたるが、互いに思い違いを重ねるところ、その場で笑ひて相互フオローせしむ。Niwa氏、星屋氏の撤収時に「一つな落としぞ」と念を入れり。

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該日は就中、今般で最も強い寒気が満ちたりし週の終の時節、負の北極振動にてオホオツクの低気圧の勢力はなはだ強し。シベリヤの高気圧から吹き込む冷気は該低気圧にて益々活発に赴くところ、北日本の多くの遠征地ことごとく日本海より流れ込む雲に覆われ赤鈍色の曇天に全国一万の天文フアンが涙を流さむ。

14時のこと、我は遠征地ウラシロダムへと車を牽き出し、17時前に談合坂の峠を通過せり。サアビス・エリヤにて休憩すれば、上空に鈍色雲ぽつりぽつりと立ち込めしところ、今更に言わんも甲斐無し。転進の志はあらじ。同志mejiroに計画進行を通告せしめ、我は再び車に乗り込み一路ウラシロの地を目指さむとせり。

ウラシロダムに到着せらるのは黄昏を疾うに過ぎた18時手前のこと、既にNiwa氏撮影に備えり。負けめ。いとくちをし。直ちに機材を展開し、前回の教訓より極軸を導入せしめしとき、また曇天直ちに北天の晴れを簒ふ。当日は強い冬型の気圧配置にて、ウラシロダムは強風に戦慄かされたり。Niwa氏の機材BORGは飆風に煽られ撮影安定せじ。あなおそろし。

僅かばかりなる北天の晴れを利用せむとて、前記事にて未達になりしピリオヂツク・エラアの測定・検証をば完遂せしめず。ピリオヂツク・エラアの検証は、抑々、前稿からの課題にして拳拳服膺するべきところなるが、徒に極軸を僅かばかりずらし検証用に10分ばかりなるコマを撮りにければ、3分・4分、1分・2分と露光を重ね撮影するらむ、SDカードに記録せむコマは尽く流れ星となれり。極軸こそ正規に合わせるを忘るるは厳に戒むれやも。

我、Niwa氏がBORGの面前を通らむとて、「あなかま」と招き制さるるとて慎む。21時を回りしころ、ただ冷えにひえいるとて湯を沸かして同志mejiro珈琲を淹れり。一同、舌鼓をうちて、「あな、うまし」と言へり。同志は業務にて珈琲の抽出技術を競ひし社員。毎日昼が食わむとて社員が食堂に集まりし後、休憩室に侍りて珈琲ひとしづくをこそいと丁寧に淹れ出すとて僅かばかりなる社員にのみ振る舞わむ。

以前、戯るとて顧問に「大」をつけて呼び始めむ。我が大顧問を敬わざるとて大顧問が「やや、汝年長への敬意に満たず」と見解を表さるところ、Niwa氏我を説かむと試みしも同志mejiroの珈琲にやる気を失わはむ。次度の遠征も同志mejiroの珈琲で説教を回避せむや。

同志mejiro、夜半を過ぎて同志mejiroは帰路に付きたり。やがて、我も夜が更けむとて、ねぶらむ。

次項にてロオズ・ネブラと名高い赤い水素輝線が放つ輝きこそ画面を赤く染めむや。いといみじ。

ロオズ・ネブラとその周辺領域

ここまで極端に振れるとつかれるのでもとに戻ります。前回、比較的真面目な記事を誂えたところ、星撮り日記のnabeさんから「別な人のブログを読んでいるようだ」との評価を頂きましたので、また別な人風に書きました。

さて、今回の撮影対象はバラ星雲(NGC 2237-9, 2246, The Rosette Nebula)です。本当はかもめ星雲を撮影しようと考えていましたが、ウラシロの山々が思ったよりも高く、対象を隠してしまうので、断念しました。南が開けた別な遠征地でまた狙いたいと思います。そこで対象を変更して、バラ星雲からクリスマスツリー星団にかけてを撮ろうと思ったのですが、縦横の構図を間違えてクリスマスツリー星団が写っていません。でもまあいいです。バラ星雲が入っているので、ヨシ!としましょう。

前回確認しようと思っていたピリオディック・エラーの検証ですけれど、遠征のときはやめたほうがいいですね。満月の夜にまた狙ってみます。

そういうわけでして、今回の釣果はこちらです。StarNetを使って、星雲と星を別々に処理する方法を覚えました。が、まだまだ微恒星がうるさいです。あとなんだか全体的に星が青すぎる(ColourSaturationをかけすぎたか?)。素材自体は素直でいい感じだったので、また処理を試してみたいと思います。

NGC 2246 The Rosette Nebula
date: Dec. 20th, 2020
location: Ohtsuki City., Yamanashi Pref., JPN
optics: SIGMA 70-200mm F2.8 DG OS HSM | SPORT
camera: CANON EOS 5D Mark IV(unmodefied)
mount: iOptron GEM-45 w/o auto guide
exposure: ISO1600, f3.5, 300sec x 53frames.

最後に

同志mejiroの遠征記は、また後ほど。野暮用があるとのことで、途中で帰ってしまいました。やつは破門ですな(いつもの様式美)。暇なぐらすのすちとは異なり、用事があるとは羨ましいけしからんやつぞ。あと、コーヒー美味しかったのでまた淹れてください。水は用意しますので。

本当の最後に。本稿の最初は舞姫のオマージュです。