Sonnarが話題のティールアンドオレンジ (T&O) を自力で完全再現する

TL; DR

Sonnarです。今回は巷で話題になっているティールアンドオレンジ (T&O) というカラーモードについてのお話です。

Adobeの写真現像ソフト" Lightroom Classic"を用いて、SIGMA fpに搭載されているT&Oを完全再現してみました。

SONY α7RⅢ T&O

■目次

1. T&Oについて

【ファッション的ブーム?】T&O

いきなりですがT&Oという言葉を聞いたことはありますでしょうか?私もここ半年くらいでかなり耳にするようになりました。

T&Oとは、写真・映像の雰囲気を青緑 (ティール)とオレンジ色に偏らせるグレーディング技法です。映画ではよくこの色表現が使われているらしいですよ。一見難しそうに聞こえますが、なぜ私たちのようなアマチュアカメラマンの耳にも入るようになったのでしょう。

それは2019年10月25日、SIGMAより発売されたフルサイズミラーレスカメ"SIGMA fp"の影響が少なからずあるのではないでしょうか。

SIGMA fp

このカメラは、世界最小・最軽量のフルサイズミラーレスカメラとして一躍注目を集めています。(最近だとWebカメラとして使用する人も増えたんだとか。)

このSIGMA fpに搭載されているカラーモードの一つに"T&O"があるのです。カラーモードというのは他社カメラでいうピクチャーエフェクトのようなものです。カメラ側で色調やコントラストを自動で調節してくれるものですね。

つまりこのSIGMA fpを使えば、誰でも簡単に映画風の”シネマティック”な写真が撮れるということです。実際SNS等を見てみると、このカラーモードで撮影された写真が数多く投稿されています。

そう、ファッションブームのように。

2. T&O再現工程

それでは、今回行った再現工程を説明していきます。

大きく分けて、

  • 素材準備
  • Lightroom Classicでの色再現
  • 評価

の順番で進めていきます。

2-1. 素材準備

まずは元となる素材を準備します。私の所有しているSIGMA fpを使用し、以下の2枚の画像を用意しました。

SIGMAfp_RAW撮って出し

SIGMAfp_JPEG撮って出し_T&O

  • 1枚目:RAWデータをそのままJPEGに書き出したもの
  • 2枚目:カラーモード "T&O" で撮影したもの

素材としていかがなものかというのは一旦置いておいて、この2枚の画像を比較しながら進めていきます。

基本的には1枚目のRAWデータを編集し、2枚目のような写真の色再現を目指していきます。

2-2. Lightroom Classicでの色再現

ここでは、Adobeの写真現像ソフト" Lightroom Classic" (Lr) を用いてRAWデータの編集を行います。ちなみに私はWindowsの環境下で起動しています。

まずは2枚の画像をLrに取り込みます。こんな感じで比較しながら作業していきましょう。

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グレーディングを開始する前に、どのようにしたら良いか少し考えてみます。私はこの2枚の画像を比較した時、以下の特徴に目がいきました。

  • 植物の緑色や黄色い液体がオレンジ色に偏っている
  • ランチョンマットの青色が水色になっている

まさにこれ、T&Oの特徴ですよね。このようにRAWデータとT&Oで撮影したJPEG画像を比較すると、カメラ側でどのように色彩調節がされているか見えてきます。

それではいよいよRAWデータをいじっていきます。"色味を変える"という意味で、下記のように色相を操作したくなりますがちょっと待ってください。

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Lightroom作業画面 (色相調整)

そうなんです、Sonnarは見つけてしまったのです。”あるパラメータを操作するだけで写真がT&O風になることを・・・”

もったいぶっても仕方がないので答えを言うと、キャリブレーション 項目にある”ブルー色度座標値”というパラメータです。このパラメータを、下記のようにティール側 (左) に振ってみます。

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Lightroom作業画面 (ブルー色度座標値調整)

いきますよ・・・?

f:id:fornax:20200517205029j:plain

いかがでしょうか。たった一つのパラメータをいじっただけでかなり近づきましたね。同じ事を各色の色相調整でやるとかなり難しいんですよ、、、正直この記事はここで閉じてもらっても構いません。

そんなわけで、私はこの"ブルー色度座標値"を"T&Oエフェクトパラメータ"なんかと呼んでいます (笑)。既に80%程度再現できていますが、カーテンの花柄模様やその他細かい部分に注目しながら以下のように色相・彩度を微調整しました。

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Lightroom作業画面 (色相/彩度調整)

そして完成した画像がこちらになります。

SIGMAfp_T&OPreset

最初にお見せしたT&Oで撮影したJPEG画像にかなり近づいたのではないでしょうか。このように、"ブルー色度座標値"をいじるだけで簡単にT&Oが再現できます。お好みで色相等を調節すればよりいい雰囲気が出せると思います。

では、ここまでの過程をLrのプリセットとして保存します、 2-3. 評価 では、このプリセットを使用しての他の画像での再現性を見ていきます。

2-3. 評価

さて、ここでは先ほど作成したプリセットの評価をしていきます。SIGMA fpのRAWデータにプリセットを当てた画像と、T&Oで撮影したJPEG画像の2つで比較していきます。

結果として、どのシーンでもT&Oで撮影したJPEG画像にかなり近い色表現ができていました。今回の再現実験は成功といっていいのではないでしょうか。何度も言いますが、パラメータ1つで8割できちゃいます(笑)。

それでは、プリセットを当てた画像をご覧ください。

f:id:fornax:20200518225001j:plain
T&O PresetEvaluation 1

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T&O PresetEvaluation 2

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T&O PresetEvaluation 3

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T&O PresetEvaluation 4

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T&O PresetEvaluation 5

いかがでしょうか。今回は夕日をメインにテストしてみましたが、このほかにも様々なシーンで使用することができそうです。簡単に"シネマティック"な表現が得られますのでぜひお試しください。

3. まとめ

今回は巷で話題になっているティールアンドオレンジ (T&O) の色再現をしてみました。特に難しいことをしたわけではなく、Lightroomのパラメータ1つで8割再現できてしまうのが凄いですね。

Lr以外の写真現像ソフトでも似たようなことができるかもしれないので、皆さんもぜひ挑戦してみてください。私も、シネマティックなかっこいい写真が撮れるよう精進いたします。

それではまた。

SIGMA fp T&O